20. Supernova
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何度生まれ変わっても射抜かれて死んでしまう僕が、初めて人間に生まれ変わってその射手に出会う話。
成分表:ネームレス男主夢 | 輪廻転生 | 軽度の怪我描写
僕には前世の記憶がある。
それがあまり一般的なことではなく、またそれについて大っぴらに口にするべきではないらしいと学んだのは、エレメンタリースクールに上がってからのことだった。
最初はハシバミ色の毛並みが美しい野ウサギだった。次は鋭い牙を持った猪で、その次は立派な角の生えた逞しい牡鹿。何度も、何度も。生まれては死に、また生まれた。
なにも全ての生き様を事細かに記憶しているわけではない。僕が覚えているのは、きまってその生を終える最期のひと時だけ。
死にゆくその瞬間、僕はいつも何かが風を切る鋭い音を耳にした直後に地面に倒れ、遠のく意識の中でこちらを見下ろす鮮やかな緑色の光を見つめていた。不思議と恐怖は感じず、むしろ「そういうものなのだ」と納得してすらいたように思う。
あれは一体何だったのだろう。もう何度目かも分からない生まれ変わりを経て、僕は初めて人間として生を受けた。
今世の僕は、珊瑚の海に浮かぶ小さな島で生まれた。島に一つだけ存在する小さなエレメンタリースクールを卒業してからは、毎日船で一時間かかる学校に通いながら家の手伝いをする。
そんな退屈な毎日を変えたのは、一通の手紙だった。僕の暮らす島からずっと遠く、世界の果てのような場所にある、魔法士を養成するための学校。僕にはその学校に入学する資格があるのだと告げるその手紙を読んだとき、僕は期待した。もしかすると、「記憶」の謎が解けるかもしれないと。
残念ながら、僕のそんな期待はあっさりと裏切られてしまった。魔法が使える者が皆、前世の記憶を持っているわけではないと分かったからだ。僕の生まれた島で魔法が使えるのは僕一人だったから、関係があるものだと思い込んでいた。そこに繋がりがないのなら、僕はどうして昔のことを覚えているのだろう。一体何のために、ただ静かに生を終えていく瞬間のことを、夢にみるのだろう。
入学からしばらく経って、学園での生活にも少しずつ慣れてきた頃。人通りの少ない裏庭で課題をまとめていた僕は、ひと段落ついたところでぐっと伸びをした。
小腹も空いたし、そろそろ寮に戻ろう。そう思って立ち上がったその瞬間のことだった。突然全身に雷に打たれたような痺れがはしって、その場から動けなくなってしまったのは。
身体の震えを抑えようと腕に抱えた教科書をぎゅっと抱き締めると、不意に目の前に陰が差した。
雲? それとも何か飛んできた? 弾かれるように顔を上げれば、すぐ目の前に金髪の生徒が立っていたから驚いた。音も気配も感じなかったが、いつの間に表れたのだろう。訝しみながら、つばの広い帽子を目深に被った相手に声をかける。
「あの、何か?」
「これは失礼を」
取り払われた帽子と、太陽の光に晒されて輝く美しい二つの宝石。その緑色に射抜かれて、僕は理解した。前世の「僕」たちは何故死んだのか。どうして僕は、ここに来たのか。
「……やっと会えたね」
見つかったのは、どちらだったか。
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