19. 夜香

Caption

Twitterで呟いていた「夜遅く潜り込んできて暖を取り朝日が登る前にはいなくなるルーク・ハントのせいで僕は夜の香りしか知らないまま今日も一人で目覚めるんですね」の話。
成分表:ネームレス男主夢 | 添い寝


 ひんやりとした空気と共に、するりとシーツの間に忍び込んでくる気配。ベッドの中ですっかり温まっていた足先に触れる肌の冷たさによって、僕の意識はふわふわとした心地よい微睡の世界から掬い上げられてしまう。
 いい夢がみられそうだったのに。非難の意味を込めて小さく唸り声を上げながら重い瞼を持ち上げたが、消灯後の部屋はまだ暗い。生徒たちが眠りについた寮内は昼間の喧噪が嘘のように静かで、ふと本当は僕はまだ眠っていて、夢をみているのではないかと不安になる。
 今は一体何時なのだろう。伸びをするようにいつもスマホを置いているあたりを弄れば、指先が僕のものではない柔らかな毛先に触れる。
 そのときふわりとカーテンが揺れ、かすかな冷気が僕の頬を撫でた。ゆらめくカーテンの隙間から差し込む、青白い月の光。その静かな明かりに照らされて輝く美しいブロンドを眺めていると、侵入者はその形のよい後頭部を揺らして静かに身動ぎをした。

「……すまない。起こしてしまったようだね」

 まるで内緒話でもするように低く囁く声と、薄暗い部屋の中でじっとこちらを見つめる緑色の瞳。謝罪の言葉を口にしてはいるが全く悪びれた様子がなく、よく見ると口元には笑みを浮かべている。それもそのはず、彼はハナから僕を起こすつもりでベッドの中に入ってきた。いつものように僕を起こすことなく忍び込み、出ていくことだってできたのに。

「ルーク、」

 目覚めたばかりで乾いた喉からは、掠れた声しか出てこない。返事の代わりに、形のいい長い指が僕の髪を梳いた。
 なんと言葉を続けたものか。そんな迷いを見透かしたように、大きな手が僕の頭を抱き寄せる。
 同時に触れあう足先。その冷たさに、思わずびくりと身体が震えた。せっかく温まっていたのに、なんて文句を言っても無駄なことは分かっている。だから僕はただ一度大きく溜め息をつくと、冷え切った爪先に足を絡めてその胸元に顔を埋めた。
 ふっと小さく笑う声と、トクントクンと脈を打つ心臓の音。僕よりも少し遅いその規則正しい音に耳を澄ませているうちに、僕の意識はまだらになって眠りの世界へと沈んでいく。

 次に目を覚ましたときには、君はいつものようにいなくなっているのだろう。その身に纏う夜の香りを隣に残して。

 




この作品を共有 

👏waveboxで拍手 💌フォームで感想

読んだよ!報告、感想とても嬉しいです!ありがとうございます!


Top